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カウンセラー名: 窪田法明
 
 
 
 

中小企業のための産学連携における発明の保護と利用
窪田特許事務所 所長 窪田法明


 

@産学連携の背景
ご存じのように、最近の中国や韓国、東南アジア諸国の世界経済への進出はめざましく、特に、中国は日本の中小企業が担っていた物作りの役割を担い(奪い)、今や日本の中小企業は衰退の一途をたどっています。
考えてみるに、日本の中小企業がこのような状況を打開するには、中小企業の技術水準を今よりも更に向上させたり、中国、韓国、東南アジア諸国に真似のできない新しい商品を開発して、中小企業の国際競争力を今以上に強化させるしかありません。
このような状況下で日本国内を見るに、大学には中小企業を活性化させる可能性を有する発明が眠っており、また、若い優秀な研究者も多数います。
もし、これら発明を顕在化させ、また、若い優秀な研究者に優れた発明を生み出して貰い、それらの発明を中小企業で事業化させることができれば、日本の中小企業の国際競争力は強化され、日本の景気は回復し、国の財政事情は良好になるのではないでしょうか。
そこで最近、国(文部科学省、経済産業省)は、大学の社会貢献という観点から、大学と中小企業とを積極的に連携させ、大学にも発明を生み出させ、大学が生み出した発明を中小企業に積極的に活用させ、中小企業の国際競争力を強化させ、日本経済を再生させようとしています。

A産学連携を成功させるには
それでは、大学と中小企業とは簡単に連携できるものでしょうか。その答えは、「そんなに簡単には連携できない」と言わざるを得ません。
その理由は、大学と中小企業との間で意思の疎通がうまくできるかわからない。研究中にどのような不測の事態が起こるかわからない。研究結果が出るのにそれなりの時間がかかってしまう。などが上げられます。
大学と連携時の留意点を左表にまとめました。これが産学連携を上手く進めるためのコツです。

B発明の保護について
産学連携では、まず研究が行われ、発明が生まれた場合、その発明について特許出願の検討が必要になります。

特許出願は事業化に必要な発明についてのみすべきである
大学は事業化の可能性を判断する力をあまり持っていないので、特許が取れそうな発明は、事業化のことをあまり厳格に検討せずに特許出願をしてしまう傾向があります。大学はこのような傾向で特許出願をしているので、共同研究をしている中小企業は事業化のことを良く考えて特許出願について助言した方が良いでしょう。

特許出願は弁理士の専門分野を調べて依頼するのが良い
特許出願から登録までは非常に専門的な手続が必要ですが、特許の専門家である弁理士に発明の内容を説明して依頼すれば特許出願をすることができますので、依頼する側としては細かい手続まで把握する必要はありません。
ただ、弁理士は技術分野に得意、不得意がありますので、その発明の技術分野が得意な技術系の弁理士に特許出願を依頼するのが良いでしょう。得意な技術分野は、弁理士会のホームページや弁理士自身のホームページなどから判断することができます。

特許出願は事業化の方向を明確に示して依頼すべき

大学では論文発表の準備をするついでに特許出願を考えるケースが多いので、特許出願を弁理士に依頼する場合、論文発表の資料を提供して明細書を作成させる傾向があります。
論文発表の資料が学術的な視点でのみ作成され、具体的な事業を前提として作成されていないと、明細書も具体的な事業を前提として作成されない傾向になり、事業を防護する明細書という視点で見ると、防護力が少し弱いものとなる傾向があります。
中小企業が共同出願人になる場合、特許出願を大学側だけに任せるのでなく、中小企業側も弁理士に事業化の方向を明確に示し、その事業を防護するという視点で明細書を作成させた方がベストであると言えます。

特許を受ける権利の帰属はどうなるか
特許出願は特許を受ける権利に基づいて行われます。つまり、特許を受ける権利を持っている者が特許出願人になることができるということです。この特許を受ける権利は発明をすることによって生まれますが、産学連携では特許を受ける権利がだれに帰属するのか分かり難い面があります。上表に特許を受ける権利の帰属を産学連携の態様ごとにまとめました。

特許出願と学会発表が重なった場合はどうすべきか
研究成果を学会で発表すると新規性を喪失してしまうので、その後、特許出願をする場合は特許法第30条(新規性喪失の例外)の規定の適用を受ける必要があります。
しかし、この規定の適用を受けたとしても新規性喪失の例外でしかなく、先願の例外にはなりません。また、この規定の適用を受けた発明について外国に特許出願をしても、外国、特に欧州では特許を受けられない可能性もあります。
従って、中小企業がこのような案件に関係している場合、可能な限り第30条の規定の適用を避け、学会発表前に特許出願をさせた方が良いでしょう。

特許権などは要不要を定期的に検討して整理した方が良い
特許出願中のものや特許権は時間の経過とともに陳腐化して不要になるものがありますので、これらは時々再検討して整理、消滅させるのが良いでしょう。特に、特許出願中のものや特許権が大学と中小企業の共有になっている場合、整理、消滅させるには双方の意思調整が必要で面倒なので、そのまま存続させてしまう傾向がありますが、不要になったものを存続させておいても維持費がかかるだけでもったいないので、積極的に整理、消滅させた方が良いと思います。

外国出願は慎重に
その発明に関する事業が外国でも行われる可能性が有る場合は、外国へ特許出願することも検討する必要がありますが、外国出願はかなりの費用(出願時だけで1カ国100万円程度)がかかりますので、発明によって得られる利益の大きさを検討してから出願の要否を決定した方が良いでしょう。

C発明の利用について
大学の特許はお買い得かもしれない
大学はホームページなどを通じて特許を売り出していますが、なかなか売れず、買い手市場になっています。もし仮に、中小企業が事業化できそうな発明をその中から見付けることができた場合は、ライセンスの申し込みをすれば、良い条件でライセンスが受けられると思われます。ライセンスの際の実施料は当事者間において任意に決定される事項ですが、一般に特許商品の売価の3?5%が目安になります。

不実施補償について
多くの大学の共同研究契約書のひな型によれば、大学と企業が特許権を共有している場合、大学はその特許発明を実施せず、中小企業がその特許発明の不実施の補償として大学に金銭を提供するという契約をする例が多いようです。
しかし、この契約は特許法第73条の規定からは問題が有りますので、中小企業としても独自の提案を出す余地があります。

侵害事件への対応
中小企業が大学から独占的通常実施権の許諾を受けていて、第三者により特許権侵害が起きた場合、中小企業は第三者の侵害行為を止めさせることができません。止めさせることができるのは特許権者だけです。
従って、このような場合のために大学が責任を持って差止請求権を行使する旨の条項を、共同研究契約書に入れさせた方が良いでしょう。

無効審判
特許に無効理由が存在する場合、その特許は無効審判によって無効にされます。
特許が無効にされると許諾を受けていた中小企業は特許に関して無防備状態になります。無効審判に対しては特許権者である大学が対応することになりますが、許諾を受けていた中小企業も特許が無効にならないように、証拠資料の収集など、大学に積極的に協力したほうが良いでしょう。

D産学連携の申し込み先は
中小企業が大学と共同で研究をしたい場合、または、中小企業が大学の特許を使用したい場合、中小企業は大学本部に話しを持ちかけても良いのですが、「知財本部」が設置されている大学では知財本部にお願いするのが最良かと思われます。
知財本部が設置されていない大学の場合は「地域共同研究センター」とか「社会連携センター」という名称の部署に話しを持って行っても良いし、中小企業の社長さんなどの個人的な人脈で大学の先生に直接コンタクトを取っても良いと思います。

(2007/11/01 近代中小企業)

 
■執筆レポート

・中小企業のための産学連携における発明の保護と利用

 
 

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