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カウンセラー名: 原田昭穂
 
 
 
 

セルフ・コンサルテーションで自社の知的財産指数を見極めよう
YKI国際特許事務所  原田昭穂


 

技術を武器とする企業にとって知的財産戦略は不可欠です。多くの大企業では知的財産部を設けて社員を配置し、知的財産戦略を策定させています。しかし、ほとんどの中小企業ではそのような組織や要員を確保することは難しいと思われます。また、中小企業といっても企業の規模や業態は様々であり一般論では不十分です。そこで、自社の知的財産に関する現状と対策を自己診断するセルフ・コンサルテーションをお勧めします。

あなたの会社の知的財産戦略の現状は?
まず、中小企業を3つのカテゴリーに分類し、それぞれのカテゴリーに属する中小企業であって、知的財産戦略の自己診断をすべき典型的な企業を例示してみました(図1参照)。

カテゴリーAは、特許出願などを継続して実施している企業群ですが、その中でも、知的財産による効果に疑問を抱いている企業です。この企業の知的財産戦略は、「知的財産を戦略的に活用しているか」がポイントとなります。
カテゴリーBは、特許出願などの実績のあまりない企業群ですが、その中でも、知的財産に関心があって何とかしたいと思っている企業です。つまり、我社には特許になるような高度な技術がないのでは、特許出願などは費用がかかるなどの認識が障壁となっている企業です。この企業の知的財産戦略は、「知的財産を戦略的に活用するにはどうすべきか」がポイントとなります。
カテゴリーCは、現状では特許出願などには縁がない企業群ですが、その中でも、将来知的財産を武器としたいと思っている企業です。つまり、今は親会社へ部品を供給するだけなので特許には縁がないが、いつか自社製品を持ちたいと思っている企業などです。この企業の知的財産戦略は、「その企業の成長や発展のためにいかにして知的財産を活用するか」がポイントとなります。
このような中小企業は、まず、自社の知的財産に関する現状と対策を自己診断する「セルフ・コンサルテーション」を試してみることをお勧めします。そして、このセルフ・コンサルテーションを簡単に、かつ実践的に行う手法を説明します。

知財リッチ・ピクチャを描いてみよう!
まず、自社の知的財産に関する現状を「知財リッチ・ピクチャ」に描いて整理してみましょう(図2参照)。リッチ・ピクチャとは、英国のピーター・チェックランド氏が提唱したSSM(ソフト・システムズ方法論)というコンサルテーションの方法論であり、探索学習型思考を特徴とします。図2の知財リッチ・ピクチャは、このSSMに用いられるリッチ・ピクチャの手法を知的財産用に多少アレンジしたもので、理解していただくために基本的な要素を例示したものです。

このSSMは、リッチ・ピクチャを描いた後、さらに各種の手法を駆使して創造的なアイデアを吟味していく方法論です。つまり、状況に対する問題を固定せずに、その問題状況から何を問題として捉えるかを探索学習により吟味する体系的な方法論です。従って、このSSMは創造的なアイデアを抽出するには非常に効果的な方法論です。興味のある方は下欄外の参考文献をお薦めします。
しかし、この方法論を使いこなすにはある程度のトレーニングが必要なので、実際にこの方法 論を駆使して自社の知的財産に関する現状と対策を吟味してみたい方は専門のコンサルタントに依頼してください。
このリッチ・ピクチャは、
・構造(structure)
・過程(process)
・雰囲気(climate)
という3つのステップにより作成します。
まず、ステップ1の構造(structure)では、自社の知的財産に関連する登場人物を図面内に配置します。この登場人物は、一般的には顧客(取引先)、競合他社、社員、弁理士などですが、他にも、市役所、商工会議所、金融機関など、或いは、商品(製品)の消費者も登場し得ます。ポイントは、関連するすべての登場人物を漏れなくピックアップすることです。そして、それらを線で結び相互の関係を表現します。

次に、ステップ2の過程(process)では、この状況の中で、登場人物同士により、どのように関連する活動がなされているのかを表現します。ポイントは、まとめることを意識するのではなく現状を整理してみることです。
また、ステップ3の雰囲気(climate)では、登場人物同士の関係を台詞にすることで、それぞれの背後にある意識や感情を表現します。すなわち、登場人物が、それぞれA社の知的財産戦略についてどのように捉えているかを想定して書き込みます。
さらに、自社の技術を整理するために自社商品(製品)分野とそれぞれの固有技術をマトリックス(基盤)にした表を挿入します。この表は、知的財産ポートフォーリオ・マネージメントの技術相関図といわれるものです。この表を挿入することで、どの分野のどの技術がどういう状況であるかが一目で分かります。
また、固有技術は、コア技術、周辺技術を意識して分類するとさらに明瞭になります。この表は商品(製品)や固有技術が多い場合には別図とします。

知財リッチ・ピクチャで「気づき」や「発見」をしよう!
この知的財産リッチ・ピクチャにより、いろいろな「気づき」や「発見」があると思います。実は、この「気づき」や「発見」をすることがリッチ・ピクチャの1つの重要な目的です。つまり、自社の知的財産に関する状況を視覚的に整理してみることで、現状を的確に捉えていないことに気づくはずです。
例えば、競合他社との知的財産に関する訴訟の可能性について、これまで余り考えたことがなかった、或いは社長の独断で特許出願などが行われ、社員は何もいえない雰囲気であったことに気づくかもしれません。
さらに、このリッチ・ピクチャを用いて社員などの関係者とディスカッションすることをお勧めします。その人の立場や地位により現状に対する認識に相違があることを発見すると思います。このように、中小企業の知的財産戦略を展開する上で重要なポイントは、知的財産に関する知識の有無を問題とする前に、各社それぞれに固有の障壁や障害があり、まずはそれに気づいていなかったということを認識することです。

描いた知財リッチ・ピクチャを活用しよう!
知財リッチ・ピクチャを描き、社員などの関係者とのディスカッションを通じてセルフ・コンサルテーションをした後、さらに、弁理士や専門の相談所のアドバイスを受けることをお勧めします。現在、知的財産に関連する各団体や商工会議所などでは、中小企業に対して無料相談会などを開催して知的財産に関する支援を行っています。
ここで、その一つの例として、「サイバーシルクロード八王子」での知的財産支援活動を紹介します。
サイバーシルクロード八王子とは、八王子市、八王子商工会議所、企業、大学および住民が一体となり、八王子のより実践的な産業活性化施策に取り組む組織です。正式名称は、「首都圏情報産業特区・八王子」構想推進協議会といいます。ここでは、60名程度の経験豊富な企業OBや専門家により組織された「ビジネスお助け隊」が、八王子を中心とした多摩地区の企業(起業)支援活動を行っているのが特徴です。そのなかで、弁理士や企業知財部経験者による知的財産に関する中小企業支援活動がスタートしました。この知的財産に関する企業支援活動は、前述のカテゴリーA、B、Cのそれぞれの中小企業に対し、知財リッチ・ピクチャによる現状分析を行い、それに基づいてその中小企業の知的財産戦略を吟味することを目指しています。つまり、知的財産部や専任の知的財産担当者を持てない中小企業の皆さんに対し、知的財産戦略を補完してアドバイスする試みです。

(2007/11/01 近代中小企業)

 
■執筆レポート

・セルフ・コンサルテーションで自社の知的財産指数を見極めよう

 
 

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