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カウンセラー名: 赤沼博彦
 
 
 
 

金融機関との正しいつきあい方 「決算書」&「経営計画」で賢い融資調達
赤沼公認会計士事務所  赤沼博彦


 

「貸し渋り」「貸し剥がし」と言われて久しいが、ここ 10 年間、金融機関の状況は目まぐるしく変化してきた。この金融機関を利用する立場の中小企業は、果たしてどのように銀行に向き合うのが賢明なのだろうか。世間に氾濫する情報に惑わされずに、自信を持って賢い融資調達戦略、対銀行戦術を行えるよう、そのコツを明らかにしてみよう。

なかなかわかりにくい金融機関の思惑
「今回の決算の状況では、格付けが下がりますから、残念ながら3カ月の手貸し以外はお引受できません。また現在お貸ししております証書貸付の金利も見直さざるをえません」

決算結果が思わしくなかったため、メインバンクだと考えていた地元地方銀行に赤字補填目的の融資を依頼した結果、このような予想外の厳しい言葉を返されて、怒り心頭又は意気消沈するという例は今だに少なくない。

しかし、このような時に、「長い取引実績があるのだから業績が厳しい今こそ支援して欲しい」と泣きついても、それは逆効果である。晴れの日に傘を貸して、雨が降ると傘を取り上げると揶揄される銀行の行動は、彼らの立場では当然だということを理解して対処しなければならない。

では、彼らの貸出先への評価、融資などの判断基準は何であろうか。まず、今や知らぬ人はいないであろう「債務者区分」と「信用格付け」が、やはり最も重要な要素であることに間違いはない。

この信用格付けは、大部分が決算書の財務数値などの第一次評価によって自動的に決まる。少なくともここで低い格付け(要注意先以下)にされた場合には、よほど幸運でない限り、銀行の対応は厳しいものとなる。冒頭の例は決算数値の悪化による典型的な例である。

しかし、実はこの信用格付けには会社の技術力、販売力、社長の経営者としての資質、社長の個人財産、関係会社の状況、他行による支援状況などの定性的要素、すなわち第二次評価、第三次評価もある。だが、現実には銀行員の事務負担が過重であることと、経営実態を評価する能力不足ゆえに、定性評価を加味した融資審査は困難だという金融機関現場の事情により、残念ながらこれを当てにするのは危険な状況である。

また、各金融機関によって貸出姿勢や貸出余力が違うという点も認識しておく必要がある。不良債権処理の完了した都銀は、優良な財務体力を背景に、決算書数値の評点による画一的な貸出にシフトしている。一方地銀以下の金融機関は不良債権が未だ潜在化しているし、金融庁検査への対応力にもばらつきがある。財務体力の脆弱な金融機関は貸出に慎重にならざるを得ないのだ。

金融庁では、地銀以下の銀行には地域の産業育成に資するように貸出先となお一層密なコミュニケーションを図ることにより、決算書一辺倒の画一的な信用格付けをしないよう指導をしている。ところが、前述した理由によりマイナスの定性評価は取り上げられやすいが、プラスの定性評価は取り上げられにくいという実態がある。冒頭の例のように密なコミュニケーションが会社側にとってアダとなる場合もあるから、話は余計複雑になってしまう。

こうした状況の中、中小企業が取るべきアクションは、まず可能な限り第一次評価(決算書の定量評価)を高めるように決算をすることが基本である。次に、業況悪化などにより一時的に決算結果が悪い場合には求められなくても改善計画書や事業計画書などを作成提示して、銀行が第二次評価、第三次評価すべき点があることを上手に訴えることが必要なのである。

対銀行対策の基本は決算書数値の改善にあり
では、最も信用格付けを決定する上で重要な決算書数値の対策を述べる。

それには、評点の決定において配点の高い財務数値に絞って決算対策を練ることである。この配点の軽重は銀行により多少異なるが、概ね似たものであることが判っている。

特に、左記の@?Cに上げられている配点の大きい財務数値が、改善されるようにアクションを取ることが重要である。

格付け評価の配点の大きい項目
@自己資本額の増額
A借入金の圧縮
B総資産の圧縮
C営業利益の増加

ぜひこの4点を目標にして決算をするよう、ご自分の会社の顧問税理士と相談することをお勧めする。具体的な施策として一般的には次のようなことを検討することになるだろう。

@自己資本額の増額
例:社長借入金の現物出資、財務状態の良い関係会社との合併

A借入金の圧縮
例:不要資産の売却による一括返済、見合定期預金解約による一括返済、売上債権回収サイトと仕入支払サイトおよび在庫圧縮による運転資金借入金の圧縮

B総資産の圧縮
例:ファクタリングやリースによる資産圧縮、貸付金仮払金その他の不良資産や内容の不明な資産を早期有税償却

C営業利益の改善
例:役務収益の増加、営業外収益や特別利益の売上計上

銀行交渉三種の神器
「経営改善計画」「事業計画(返済計画)」「資金繰表」
格付けが落ちた時に大切なのは、近視眼的対策でこの場をしのごうと思わないことである。早急に業績を本当に回復させられるのか、いつまでに回復できるかを自問自答または、幹部と一緒に議論して、「事業計画(返済計画)」と「経営改善計画」を作成しなければならない。

もし普段資金繰表を作成していないのであれば、過去1年間の「月次資金繰り実績表」と、今後1年間の「予想資金繰り表」を作成することである。特にこの「資金繰表」と「経営改善計画」「事業計画(返済計画含む)」はまさに銀行交渉の三種の神器なのである。

では、これら計画書とその活用法の要点を説明しよう。

なお業況や財務状況が重症の場合には、極めて精緻な計画書によって非常にタフな銀行交渉が必要になるので、その際は独力で解決しようとするよりも専門家に早期に相談するのが得策である。

@債務者区分が要注意先までの場合は、「事業計画」と「経営改善計画」をおのおのA4用紙1枚程度にまとめる。

A改善の結果、債務償還年数=有利子負債総額÷(営業利益+減価償却費)が、約10年以内(不動産管理業で約15年以内)、かつ債務超過の解消が3年以内に可能な状態になることを目指す。

B返済予定表により、計画完了後までは追加借入に頼らなくても資金繰りが立つ返済予定額を示す。

C店舗別・事業部別・商品製品サービスの種類別に、売上や利益を区分して数字を積上げる。

D経営改善内容の中心は、不採算部門の撤退解消、不要資産の売却、役員給与や人件費も含めた一般管理費の削減など確実なものが基本となる。

E債務者区分が要注意先までの場合は、銀行交渉にはコンサルタントは同席させず社長が自分の言葉で述べるのが良い。

F計画書を持参する時は社長が概況を述べ、後日銀行担当者から寄せられる質問に対し、面倒でも経理担当者の手を借りながら丁寧に答えるのが好印象を与えることになる。

最後に債務者区分が要注意先会社の「改善計画書」フォーム例(左図)を記載するが、この程度の簡潔さの方が良い。実際には事業計画などを作成して積極的に銀行に提示する会社はまだまだ少ないのだから、これだけでも確実に自社に有利に銀行交渉を進めることができるに違いない。


(2007/08/01 近代中小企業)

 
■執筆レポート

・金融機関との正しいつきあい方 「決算書」&「経営計画」で賢い融資調達

 
 

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