− ESとは、Employee Satisfactionの略で、従業員満足のこと−
ESというと、すぐにES満足度調査を思い浮かべる人も多い。しかし、ESの基本を理解しないで、ES満足度調査をしてもES向上には繋がらない。また、従業員の不満を解決することが、ES向上の活動であると単純に考えていると、逆にES下降の活動になってしまう危険が高い。今回は、本当にESを向上させ、業績をアップさせるES向上経営の基本を考える。
ESは従業員の不満解消だけが目的ではない
ESというと、「従業員満足」のことを指すが、従業員満足という日本語の響きだと、「従業員の不満を解消し、満足度を上げる」話だと単純に受け取る経営者や、従業員の方が多いのではないだろうか。実際にそのように考えて、従業員にはどのような不満があるのかアンケートを取り、それを解決するために、日夜ES改善活動に取り組まれている会社も存在する。
しかし、経営として企業価値を高める視点からESを考えるのであれば、単に、従業員の不満を解消するという発想だけでは足りないのである。ESを向上させ、お客様を大いに喜ばせる製品やサービスを提供し、業績をアップしていく経営を目指したいと思うならば、「経営者から一般社員にいたるまで、一人ひとりの働く幸福感を、本気で高めていく活動」を目指さなければならない。
要は、経営者や経営幹部が、従業員の問題ではなく、自分自身の問題として真剣に捉えなければならない。しかも、それと同時に、そこに働く個人個人の問題でもあるという認識も必要なのである。さらに、本当にESを高めるためには、メンタル的な要素をしっかりと考慮しなければならない。すなわち、経営者あるいは経営幹部の真摯な態度が、非常に重要である。
実際に、トップの一言で、その会社の将来に悲観して会社を去る人もいれば、逆に、トップの一言で、この会社のために命を懸けて働いてみようと思う社員もいる。そういう社員が多い会社であれば、環境として厳しい中であっても、必ず発展していくものである。社長の一言で、個人個人のESは大きく変わり、また会社全体としても、ESが大きく上がったり下がったりすることがあるのだ。
これは、中間管理職においても同じである。中間管理職自身のESだけを考えて行動をしていると、部下のESはしだいに下がっていくものだ。実は、ES満足度調査には、なかなかあらわれにくいのだが、職場の上司との関係でESが下がっているケースは結構多いのである。
いきなりES満足度調査をしない
ESを向上させようと、すぐにESに関する不満を調査することから始める会社も多いが、まずは、経営者から一般社員にいたるまで、ESについての共通認識が必要である。そして、ある程度ESについての全社的な理解が得られた時点で、初めて会社としてのES改善活動に取り組むことができるのである。
まずは、個人として、「自分のESが本当に高いのか、低いのか?」を理解することが先決である。そして、「自分自身のESを高めるには、何が必要なのか? 自分自身の力で改善できることは本当にないのか?」を、真剣に考えることがとても大切なことである。自分自身のマインド(考え方)の中に、「ES向上のさまたげとなっている部分は、本当にないのか」ということを、冷静に考えてみるのである。
大切なのは、自分自身のES満足度調査を、自分自身で行い、分析することから出発するのである。このような視点から入っていかないと、現実のES改善活動自体が、「あれしてく・れ・な・い・、これしてく・れ・な・い・」という、すぐに他人のせいや会社のせいにしてしまう、いわゆる「くれない族」の世界に陥ってしまうことが多いのだ。
日本の企業の場合は、どうしても文化的に、個人という視点がまだ弱い。しかし、自助努力の視点をしっかりと押さえるところからスタートしないと、ES向上ではなく、ES下降の活動になってしまうことが多いのである。まずは、トップはもちろんのこと、全社員が、「個人個人のES向上の歯車」を、自分で回すことが大切である(図1参照)。

立場が上の者ほどES向上の責任が大きい
さらに、厳しいようであるが、立場が上の者ほど、その組織におけるES向上の責任が大きいということを、どこまで認識できているのかということが非常に重要である。会社の状況が厳しくなって来ると、すぐに「他社に比べて、うちの従業員はやる気がないからだ」といってしまう経営者や経営幹部がいるが、そういう会社は、社員のESが低いと同時に、業績がますます悪くなっていく悪循環に入ってしまう。
逆に、責任を転嫁しないで、「うちの社員は、素晴らしい、優秀だ」ということを、繰り返し自信を持って言っている経営者、経営幹部がいる会社は、不思議とESが高い。
これは社員自身にも誇りと自信が生まれ、同時に、業績も良くなってくるという「ES向上の善の循環」というものがあるのだ。このような「ES向上の善の循環」を起こしていくという視点が、「ESを高める経営」の基本であり、経営者と社員が一体となって業績をアップしていくのである。
では、次号からES向上の具体的方法を述べたいと思う。
(2007/06/01 近代中小企業)