小さな会社の生き残りの道は、社長の思いを文書化し、それに基づき社員を教育訓練していくことから始まります。経営者の思い⇒経営方針書⇒経営マニュアル集⇒社員の訓練と評価に一貫性があるとき、顧客の信頼を得てリピートが増えます。リピートが増えるとお客を増やすのに必要な費用をかけずに売上があがるため、大変利益性が良くなります。
(前回は、「中途採用が多い中小企業社員の経歴や考え方はバラバラだから、仕事の重要な実行手順に関しては経営マニュアルとして文書化し、仕事に関しては皆同じやり方でやっていきましょう」という考え方が必要だという話でした。
今回は、その経営マニュアルを使った教育訓練方法についてです。)
教育訓練なしでは会社業績は上がらない

大手企業と違い、知名度と福利厚生に劣る中小企業は、自主的に能力向上に努めるような人材を期待することはなかなかできません。
これはきびしいが、まぎれもない現実です。ですから競争の激しい時代に、ライバル会社よりいい製品を作ったり、いいサービスをしようと思ったら、社員に勉強や訓練をさせる仕組み作りが欠かせません。
しかし現実は、経営者が毎朝説教するだけだったり、「顧客第一主義!」と張り紙を貼ったりするだけで、実際の訓練をやっていないのが一般の中小企業の現実です。いくら口頭で説教されても、やる気がなく、またやり方が具体的にわからなければ実際に行動には移せないようです。
例えば、
「我社も新規開拓をやろう。各人が努力すること!」
と社長号令をかけたとしても、何の道具も訓練も強制も無ければ誰も実行は出来ません。ルートセールスと新規開拓では、同じ営業でも全く別物ですから、前回説明したような新規開拓の経営マニュアルを作らなくてはなりません。
そして、その新規開拓の経営マニュアルをもとに、お客役を決めて模擬演習の訓練をやらせるわけです(事例1参照)。

社員の教育訓練にかけた時間が、同業ライバルとの差別化になる
もし就業時間内に訓練出来ないなら、早朝や土曜出勤をしてでもやっていかなければ、競争の激しい時代に同業ライバルに差をつけることは出来ないのではないでしょうか。これは営業だけの話ではなく、品質や技術を上げたり、サービスを向上させる場合など、どんな職種に対する教育訓練でも同様です。
また、社員が強制的にやらされる過程で「気づき」があります。つまり、うるさいから言われた通り実践したら「お客さんに褒められた」「俺って、結構仕事出来るジャン!」
今まで気がつかなかった自分の能力を発見したりします。
やる気なく仕事をしていたときには気がつかなかった発見があり、それがきっかけで仕事を頑張りだしたという例もあります。このように、自ら気づくことが大切です。上司から言われただけでは、人間なかなか変わりません。
面倒でも時間をかけて訓練をやっていかなければ、自社のサービスや技術レベルが現実に上がる可能性はありません。自主的に能力向上をしようと努力しない社員に任せていたら、何年たっても会社の現状は変わらないのではないでしょうか(表1、表2参照)。

経営資源が少ない中小企業では、社員の技術やサービス能力の向上以外に、すぐ売上や顧客を増やす施策が見つかる会社はそんなに多くはないでしょう。
決算書を分析しているだけでは、会社の業績は上がりません。買うかどうかの決定権はお客様にあり、たくさんあるライバル会社を含めた中から一番製品やサービスのいいところから買うわけで、その製品やサービスを作り実践するのは社員です。
「社員の教育訓練にかけた時間が、同業ライバルとの差別化になり、顧客に選択され、会社が維持発展していく」今は、そんな時代ではないでしょうか。
次回は、会社方針や教育訓練に対して努力した人を評価する仕組みについて解説いたします。
(2007/03/01 近代中小企業)