21 世紀は「環境の世紀」といわれます。連日報道される環境問題への対応に 21 世紀の社会はますます関心を強め、企業活動は環境取組が必要不可欠となってきます。中小企業とて例外ではありません。むしろこの機に積極的な環境取組を実施することが飛躍のチャンスとなります。そして、それらを企画〜実行〜成果へと結実させる環境リーダーの育成が重要な成功要因となるのです。
環境リーダーの育成が求められる背景
中小企業にとって環境取組とは従来、製造業における公害防止対策などが主であり、これを設備メーカーや外部専門家に任せると自社内は環境に精通した人材が存在しないということになります。しかし、昨今の社会情勢の変化によって企業の経営活動と環境取組を一体として取り扱う機会が急速に増加していることから、自社内に環境リーダーを育成する必要性が非常に高まっています。
表1にその情勢変化を整理することとします。

このように分析すると、昨今の環境問題による情勢変化は企業経営に不安要素をもたらすもののように感じられますが
「現実=事実×認識」
であり、この事実を経営者がどう認識するかによって企業にとってチャンスにも脅威にもなります。
例えば「環境対応の商品サービスを開発供給する」や「環境対応の経営体制を整備する」ことによって、将来への経営不安を緩和し、企業間の競争が単なる安値の提示ではなく、付加価値の提供で行われるようになり、環境貢献に努力をした企業が売上高の増加や利益率向上といった業績への好影響を享受することもありうるのです。
いずれにせよ環境取組が企業経営と密接に関連してきており、社内でそれを主導できる環境に精通したリーダー人材の育成が今後ますます重要になってくるでしょう。
環境リーダーの役割
まずは、表2を参照ください。

環境関連業務にはコンプライアンス(順法)やEMS(環境マネジメントシステム)など、法規や規格の要求へ応えるために実施しているものも多く、企業にとっては「やらざるを得ない守りの経営」といった位置づけが多いのではないでしょうか。
しかし、これらの業務であってもコンプライアンスをCSR(企業の社会的責任)にまで格上げして社会的評価を獲得している「サラヤ(株)http://www.saraya.com/」のような企業や、EMSをISO14001やエコアクション21といった認証を取得するための業務ではなく、EMSの自己適合宣言を行って独自の環境対応を推進することによって低迷業界でも業績好調を持続する「向山塗料(株)http://www.1611mp.jp/」のような企業もあり、環境取組の業務を「自発的に行う攻めの経営」と位置づける経営姿勢が効果的なのです。
これからの環境リーダーには、「守りの経営的管理業務」の遂行能力に加えて、将来ビジョンを描き、革新・改革の実行を率先垂範する「攻めの経営的創造業務」を主導できる能力(リーダーシップ)が求められてきます。では次ぎに、こうした人材の育成法を見ていきましょう。
環境リーダーの育成法
(1)トップ自らの信念と信頼
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風土を「育む」
環境取組を経営活動の上位へ位置づけるためにはトップ自らがその必要性を確信し、それを担う人材が将来の企業の飛躍を導くと信頼することが大切です。
@「何のために環境へ取り組むのか」を明確にする
端的に言えば「環境でビジネスをする(儲ける)のか」「ビジネスで(儲けて)環境を守りたいのか」を決めることです。後者へ至るには少々時間がかかるかもしれません。まずは前者からでも行動を起こすことが大切です。いずれにせよ「環境と経営が一体であること」を自分自身が納得するまで考え抜くことです。
A「環境取組を自社戦略の中枢に据える」ことを内外に宣言する
納得できたらそれを社内外に宣言します。
経営理念、環境方針、中長期経営計画など、どんな機会でも構いません。
フォーマルな形でトップ自らが宣言することによって取引先や地域社会および社員が企業の方針を理解し、評価するのみならず、トップ自らもコミットメント(約束) を実現する決意を固める後押しとなります。
Bトップ自らが行動する
環境と経営が一体である以上、率先して行動するのは環境リーダーである前にトップであるべきです。自身の生活を見直しボランティアや社会貢献に関心を持つなど、できることから少しずつ行動すると自分自身の意識も変化してきます。それが社員にも影響し、企業組織全体が動機づけされ活力に満ちてきます。
(2)必要な予算や権限の付与
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人材を「育てる」
トップの決意が固まり、環境リーダーを「育む」企業風土が醸成されてきたら、次は環境リーダー
を「育てる」組織の仕組みを構築することです。以下のように進めます。
@適性を有する人材を選定する
環境リーダーといっても、実際には表2のごとく多様な「期待する役割」があり、それぞれに求められる能力や業務遂行の場所(所属部署)も変わってきます。環境リーダーとして育成する候補人材の潜在・顕在的能力や性格、自身の希望などを考慮しながら企業として「期待する役割」に適性を有する人材を選定していきます。
A必要な予算・権限の抽出と付与を実施する
人選をしても当初は本人にとって未知の分野であり、従来業務との関連性如何では不安やとまどいを覚える可能性があります。そのため、活動を支える資金と権限の付与が不可欠です。
知識習得の研修や人脈形成の交流会への出席、現場まで経営の意思を浸透させるための権限や組織上の位置づけ(社長直轄にするなど)を当初から大胆に実施することが効果的です。
B付与後のフォローアップを行う
当初は業績にすぐ現れない活動への資金拠出や現場に対する業務指示に、社内からの批判やあつれきが生じる可能性もあります。そのためトップは、環境リーダーに任せきりにせず積極的に支援役として関与することが大切です。
(3)環境リーダーの動機づけ
↓
自らが「育つ」
育む風土と育てる組織を用意したら、後は、人材が自ら育つよう仕向けることとなります。最重要成功要因は動機づけです。以下の要領で進めます。
@役割に魅力を持たせ、やりたいと思わせる
a前述のトップの信念を共有することが有効です。じっくりと話し合い、担った役割の意義を本人が働く目的とさせることです。
bその上で具体的な取り組み方法については、極力本人に任せてトップはそれを肯定的に承認支援します。
c具体的な行動や成果に結びついたら積極的にそれを社内会議などで取り上げ賞賛します。
A使命感を抱かせる、やらねばと思わせる
a年初に取組の計画や目標を掲げることは業務遂行上必要です。それを自分で掲げさせ、極力社内で公表して約束とし、それを守ることの動機づけを促します。
b掲げた目標の達成を、部署や職場全体の成果として評価することで組織に一体感が生まれ、周囲の協力も得て、環境リーダー本人も責任感から動機づけられます。
c環境リーダーを複数名選定し、お互いの成果を競わせることで対抗意識から動機づけられます。但し、競う際には互いを尊重し合って切磋琢磨するように仕向け、敗者を問い詰めるような指導は慎むべきです。
B技能を習得させる、やれると思わせる
a必要な知識を習得できるよう研修への参加や交流会での人脈形成を積極的に支援します。研修後は、社内で報告会や自社活用の方法を議論するなど知識を共有、深化させる取り組みが有効です。
b環境リーダーが革新的な業務に取り組むと、周囲に指導できる上司がおらず自己満足に陥ったり方向性を見失ったりする危険があります。職場の声や必要に応じた外部専門家の活用で環境リーダーの客観的思考や行動を支援します。
c環境リーダーと職場での摩擦を避けるため、緊密な職場コミュニケーションで双方の立場を理解させるとともに、本人にも他の環境取り組みで指示する側に回るなど相互理解の促進を支援します。
環境リーダー育成の成果
環境リーダーの育成に成功した場合、企業にどんな成果がもたらされるのでしょう。環境リーダーへの期待役割やトップの関わり方にもよりますが、左記のような成果が事例として挙げられます。
@新規事業が企業収益に貢献する
A企業イメージの向上(社会的評価を得る)
B事件・事故の未然防止
CEMS本来の成果を享受する(ISO14001やエコアクション21など認証維持ではなく、環境負荷低減と業績向上)
読者の皆様の会社が、情勢変化に対応し企業の新たな飛躍のチャンスを獲得するために、積極的に環境リーダーの育成に乗り出すことを期待しております。
(2007/12/01 近代中小企業)