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カウンセラー名: 祐末輝秀
 
 
 
 

ブランドは権利化されて経営資源となる!
特許業務法人 原謙三国際特許事務所 法務室長弁理士 祐末輝秀


 

昨今、ブランドは業種・業界を問わずに重要かつ貴重な経営資源として注目を浴びている。しかし、ブランドは権利化されて初めて経営資源として有効に活用でき、将来のキャッシュフローの増大をもたらすものである。本稿では、ブランド(商標)の権利化の重要性について具体例とともに言及する。

権利化されたブランドが登録商標である

中小企業における商標

まずは、本誌の主な読者である中小企業の経営者や経営幹部の皆様に質問です。「そもそも、中小企業の定義とは何なのでしょうか?」

私が日頃商標に関してお付き合いさせていただいているお客様の中には、この@?Cに該当するお客様は少なくありません。つまり、商標権を取得しビジネスに積極的に役立てている中小企業は、現に多数存在しているのです。
(左枠参照)

また、特許・実用新案・意匠は、どちらかというと製造業に携わる方々に深く関係するものです。しかし、商標は製造業のみならず、建設業・運輸業・サービス業はもちろんのこと、今年(平成19年)4月1日より卸売業及び小売業の皆さんも利用できるようになりました。したがって、商標に無関係な業種はもはや存在しないのです。

商標権を取得する手続は商標法という法律で定められています。この法律によれば、会社の規模に関係なく、一定の要件さえ満たせば商標権が発生します。確かに大企業は中小企業に比べて資金が豊富です。そのため、若干ではありますが大企業に有利な面があることは否定できません(たとえば商標を有名にするための広告宣伝費は大企業の方が多いでしょう)。

しかし、商標権を取得するに当たっては、大企業も中小企業も同じ土俵の上で戦います。そして、商標権の効力という面では、企業規模の大小は関係ありません。

ハウスマークとペットネーム

ブランドとは何か。その定義はいろいろありますが、ここでは「他社及び他社の製品やサービスと区別するために用いられる文字、図形、記号など」とさせていただきます。

そうすると、ブランドのない企業は存在しません。社名(商号)や屋号もブランドです。社章を採用していれば、その社章も立派なブランドです。このような企業を代表する商号・屋号・社章などのことを商標の世界では「ハウスマーク」といいます。たとえば、大企業の例で言いますと、「SONY」や「SHARP」はハウスマークです。

これに対し、製造業・サービス業を中心として、ハウスマーク以外に個々の商品やサービスに商標を用いることもあります。たとえば、「WALKMAN」や「AQUOS」です。このような特定の商品やサービスを表すブランドのことを商標の世界では「ペットネーム」といいます。

したがって、どのような企業にとってもハウスマークやペットネーム=商標(ブランド)というものは、規模の大小を問わず非常に身近なものであり、企業戦略に大きく関わってくるものなのです。

権利化の必要性

すでにお使いになっているハウスマークやペットネームといったブランドには、お客様の信用が蓄積されています。また、これから新たに採用するブランドは、お客様の信用が今後蓄積されていくものです。そして企業に対するイメージは、ブランドを通じてお客様の心や意識の中に築き上げられていくものです。このようなイメージは、今日の熾烈な競争社会において、他社との差別化を図る上で大きく貢献しています。

では、企業のイメージを左右するブランドが同業他社によって勝手に使われた場合にはどうなるでしょうか。今まで築き上げてきた信用や企業イメージは崩壊し、差別化が図れなくなってしまいます。すると、特徴のない単なるノンブランド商品・サービスと同じになってしまい、際限のない価格競争に埋没してしまいかねません。

これを避けるためには、ブランドについて権利を取得しておく必要があります。商標権を取得すると、同業他社が似たようなブランドについて商標登録出願をしてきた場合に、その登録を阻止することができます。また、同業他社が勝手に似たようなブランドを使っている場合には、商標権侵害として差し止め(使用の中止)や損害賠償を請求することができます。

この強力な権利と保護は、中小企業に大きなメリットとなり、経営上のリスクを抑えることにもつながります。そして、お客様にかける迷惑を最小化し、円滑に取引などを行うことができるのです。

さらに、これらは日本国内に限らず、製造業や卸売業を中心として、海外に営業拠点を設けたり商品を輸出したりしている中小企業にも効果をもたらします。特に、中国、韓国、台湾は、多くの日本企業が投資を行っているため重要です。もし、ブランドを権利化することなく、それらの国でビジネスを展開しようとしても、失敗してしまう可能性があるのです。

また、商標はほとんどの国において先願主義(似たような商標について出願があった場合には、先に出願した者に権利を与えるというシステム)を採用しており、同業他社や当該国の国内企業が先に商標出願してしまうと、その国ではブランドを権利化することができなくなります。

このように、企業規模に関係なく『ブランドは権利化されて初めて強力な経営資源』となるのです。むしろこれは、中小企業にとってこそ重要な経営資源であると言えるのではないでしょうか。

普段の仕事や日常生活において、○が付されているものを見たことはないでしょうか。これは登録商標を意味します。つまり、世の中で出回っている登録商標は、実は権利化されたブランドなのです。

では、その事例を紹介してみましょう。

登録商標の事例集

今まで一般論を述べてきました。このこと自体は非常に重要なことなのですが、具体的にイメージしにくいかも知れません。そこで、以下に私が実際に経験し、あるいは見聞きした具体例をお伝えしたいと思います。なお、弁理士には守秘義務がありますので、具体的な企業名や商標名などを挙げることは控えさせていただきます

実例@ A社の場合
飲食業を営むA社は、郊外において、ある屋号の下で営業を行っていました。店舗数は少なく、地元の人だけが利用しているような小さな飲食店でした。
しかし、あるとき「内容証明郵便」が送られてきて、当該屋号は商標権を侵害しているので即刻使用を中止するよう要求されました。

A社は商標権者より早くから当該屋号を使っていましたが、「商標登録」を得ていませんでした。そのうえ、店舗数が少ないため周知であるとの立証ができず、「先使用権」を主張することができませんでした。
そのため、やむを得ず屋号を変更することになりました。これに伴い、店舗の看板やのれんのみならず、メニューや箸袋、さらには制服や名刺をも作り直さなければなりませんでした。

このケースでは、実際に屋号を使い始めたのはA社が先です。しかし、先願主義の下では使用の先後は問題とならず、先に使用を始めた者の商標が周知になっていることを立証できた場合に限り、当該商標を使い続けることができるに過ぎません。そして、この周知であることの立証はなかなか成功しません。

このように、規模が小さいからといって商標権を取得していない場合には、後日似たようなブランドを権利化した者から、ブランドを変更するよう要求される事態が生じる可能性があります。

実例A B社の場合
菓子などの製造業のB社は中国への事業展開を計画していました。そこで、ハウスマークについて中国で「商標出願」を行ったところ、似たような商標がすでに登録されている、という理由で登録が認められませんでした。
このまま中国に進出すると、「商標権侵害」となってハウスマークの変更を余儀なくされるとともに損害賠償を請求されかねません。そのため、B社は結局中国進出を断念しました。そのため、中国という巨大マーケットでの相当な額の利益を失うとともに、事業計画に要した時間と費用が無駄になりました。

このケースでは、中国においてハウスマークの権利化ができなかったため事業計画が中止になりました。海外に進出している、あるいは進出の予定がある企業にとっては、当該国におけるブランドの調査と権利化は避けては通れない重要事項なのです。

実例B C社の場合
靴などの製造業者のC社は、自社の「登録商標」がインターネット上で使われているのを発見しました。調べてみると、自社の商品と同じ商品を取り扱う通販サイトでした。
そこで、C社は通販会社に「内容証明郵便」を送り、当該商標をサイトから即刻削除するよう要求しました。通販会社は、C社の登録商標の存在は知らなかったと弁明していましたが、結局C社の要求に応じ、当該商標を自社サイトから削除しました。

このケースでは、権利化されたブランドを無事保護することができました。ブランドが権利化されていることを知っているか否かは、商標権侵害が成立するか否かとは関係がありません。
このように、ブランドを権利化することによって得られる保護は、権利化の知・不知に関係がないため、非常に強力であるということができます。

実例C D社の場合
電子部品の製造業者であるD社は、ある商標について商標権を取得しようとして「商標出願」を行いました。事前に調査したところ、似たような商標がすでに登録されていることがわかっていました。そして、さらに調査を進めたところ、当該「登録商標」は全く使われていないことも判明していました。
そこで、D社は「不使用取消審判」を請求するとともに「譲渡交渉」を行いました。交渉は残念ながら決裂しましたが、審判においてこちらの主張が認められました。その結果、希望していた商標権を取得することができました。

このケースでは、譲渡交渉と並行して審判を請求しました。このように、商標法で定められている制度を活用することにより、ブランドを権利化することが可能になる場合もあります。

実例D E社の場合
服飾関係の製造業者であるE社は、ある商標について商標権を取得しようとして「商標出願」を行いました。服飾関係では、ブランドが重要視されており、世界的に統一したブランドを使うことが少なくありません。「ルイ・ヴィトン」や「グッチ」などが典型です。
しかし、似たような商標がすでに登録されているため希望する商標は登録できないという拒絶理由が通知されてきました。このままでは商標権を取得することができません。逆に、商標権侵害として訴えられるおそれがあります。
そこで、似たような商標の権利者と交渉し、その商標権を買い取りました。そして、商標権の移転を特許庁に登録し、希望していた商標を登録することができました。

このケースは、ブランドの占める割合が非常に高い服飾関係における問題でした。しかし、ブランドを権利化ができないと商品などをマーケットに投入できないのは、なにも服飾関係に限ったことではありません。どのような分野・業種においても、ブランドを権利化することが大切であり、そのためにはある程度の投資(費用)が必要なのです。

最後に

ブランドは大企業のみならず中小企業にとっても、同業他社との差別化を図るため、そしてお客様に認知・認識していただくために非常に重要なものです。しかし、このようなブランドも権利化していなければ、模倣者を排除することができず、逆に自社ブランドの変更を余儀なくされる場合もあります。さらには、事業計画が根底から覆される危険もあります。

しかし、ブランドを権利化するためには、一定の要件をクリアする必要があります。この要件について詳述する紙幅はありませんので、お近くの弁理士あるいは私どもまでご相談ください。
なお、私どものホームページには、「商標出願の電子依頼方法」及び「商標支援室」というページがありますので、ご活用いただければ幸いです。

(2007/11/01 近代中小企業)

 
■執筆レポート

・ブランドは権利化されて経営資源となる!

 
 

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